こんにちは!
KEN(@nomilenolife)です。
本ブログでは、鉄道・航空などの公共交通や、移動が快適になるサービスに関する情報などを、「旅行・出張」というカテゴリーの記事でご紹介しています。
出張や旅行で利用の多い「新幹線」と「飛行機」は、
「週刊東洋経済2019/11/2号」に掲載されていた「新幹線と飛行機」
新幹線と飛行機の路線別シェア分布
東京発着路線
はじめに、東京と各地を結ぶ新幹線と飛行機のシェア分布と所要時間を見てみましょう。

路線 | 飛行機 | 新幹線 |
東京-札幌 | 3時間30分 | 8時間15分 |
東京-函館 | 3時間30分 | 4時間30分 |
東京-秋田 | 3時間12分 | 3時間50分 |
東京-仙台 | ― | 1時間30分 |
東京-新潟 | ― | 1時間40分 |
東京-金沢 | 3時間20分 | 2時間30分 |
東京-名古屋 | ― | 1時間40分 |
東京-大阪 | 3時間20分 | 2時間50分 |
東京-岡山 | 3時間11分 | 3時間20分 |
東京-広島 | 3時間50分 | 4時間 |
東京-山口 | 4時間30分 | 5時間 |
東京-福岡 | 3時間30分 | 4時間50分 |
図を見ると、所要時間によって綺麗にシェア分布が分かれていることがわかります。
例えば、世界的にもドル箱の航空路線である「東京-札幌」や「東京-福岡」は、鉄道では時間がかかりすぎるため、飛行機の独断場となっています。
また、ちょうど「4時間の壁」に該当する以下の路線では、新幹線と飛行機の優位性が逆転していることがわかります。
・東京-広島
・東京-山口
・東京-函館
・東京-秋田
4時間の壁とは、新幹線と飛行機のシェアが拮抗する境界となる所要時間のことを指します。
4時間より所要時間が短いと新幹線が、長いと飛行機が優位になります。
そのほか、ほとんどが新幹線の独壇場である「東京-名古屋」「東京-仙台」にわずかながら飛行機のシェアがあるのは、成田空港からの国際線乗り継ぎ客向けの需要であると考えられます。
大阪発着路線
次に、大阪と各地を結ぶ新幹線と飛行機のシェア分布と所要時間を見てみましょう。

路線 | 飛行機 | 新幹線 |
大阪-仙台 | 3時間10分 | 4時間30分 |
大阪-新潟 | 3時間10分 | 5時間 |
大阪-名古屋 | ― | 50分 |
大阪-福岡 | 3時間 | 2時間50分 |
大阪-長崎 | 3時間50分 | 4時間50分 |
大阪-熊本 | 3時間40分 | 3時間10分 |
大阪-鹿児島 | 3時間50分 | 4時間30分 |
九州新幹線が開業したことで、「大阪-熊本」は新幹線が優位になっています。
しかし、途中で在来線への乗り継ぎが必要な「大阪-長崎」や、新幹線でも4時間弱の所要時間がかかる「大阪-鹿児島」に関しては、依然として飛行機が優位な状況が続いています。
また、意外なシェア分布を示しているのが「大阪-新潟」です。
こちらは、新幹線を乗り継いだら5時間はかかります。
それでもシェアが拮抗しているのは、東海道新幹線および上越新幹線の本数がそれなりに確保されていることで利便性が高いのではないでしょうか。
そして、やはり世間的にはまだまだ飛行機というのは鉄道に比べて馴染みの薄い乗り物なのではないかと考えます。
東京-大阪のシェアを新幹線が奪いきれない理由
これには2つの理由が考えられます。
伊丹空港の立地の良さや交通網の充実
1つ目の理由は、「伊丹空港の立地の良さや交通網の充実」です。
阪急沿線から新大阪へのアクセスは不便なため、阪急ユーザーは飛行機を選ぶ傾向があります。
また、転勤族が多い北摂地域へもモノレール1本でつながっています。
さらに、伊丹空港からは大阪市内はもちろん、京都や三宮など各地へリムジンバスが出ています。
こうした空港までの交通網の発達も、飛行機の利用を支えているのではないでしょうか。
航空会社の努力
2つ目の理由は、「航空会社の努力」です。
航空会社は日本だけでなく、世界の航空会社と競争にさらされています。
そのため、昔から以下のようなサービスを拡充してきました。
・アライアンスの加盟
・マイレージサービスの導入
・チケットレス化
・予約・購入ウェブサイトの充
さらに、頻繁に利用する人向けにラウンジサービスを導入したことで、お得意様の需要確保ができていると考えます。
このような企業努力を航空会社が続けてきた一方、新幹線は国鉄から分割民営化されたあとも走らせていれば莫大な利益が出るため、殿様商売で大きな変化などをすることなく、今日まで昔と変わらぬサービスを続けていれば大丈夫でした。
東北新幹線は、東京-仙台間だけで1日10億円の利益が出ます。
東海道新幹線は、1両に1人乗客がいれば新幹線の電気代を賄えます。
その結果、現在は飛行機に比べてチケットレス化やウェブサイトからの予約システムが劣っているという状況に陥っています。
JR側としても、これまでと同じことをやって生き残れる時代ではなくなりつつあることを察知し始めているのではないでしょうか。
思わぬチャンス?北陸新幹線水没による航空需要の復活
2015年3月に「東京-金沢」が新幹線で結ばれたことにより、それまで国内屈指のドル箱路線であった「東京-小松」などは減便を余儀なくされました。
新幹線開業前は「東京-小松」「東京-富山」は1日6便ほど飛んでいたのが、今では1日4便かつ機材も小型化されています。
しかし、2019年10月に発生した「台風19号」により、長野にある北陸新幹線の車両所が水没したことは記憶に新しいのではないでしょうか?
石川・富山も本来であれば「東京-新潟」「東京-仙台」のように新幹線が独壇場を築ける所要時間の地域ですが、水没でしばらく新幹線が動かなくなったことで、臨時便が設定されたり機材が大型化されたりと、航空需要の思わぬ復活が実現しました。
現代の気候変動による自然災害の激甚化を考えると、いつどこで交通機関が麻痺するかわかりません。
そんなとき、昔のように「シェアの奪い合い」をしているのではなく「それぞれの需要に応じたすみ分け」を考えることが必要な時代になってきているのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、「新幹線と飛行機」の現代トレンドを考察してきました。
【第1章】
4時間の壁により、「新幹線と飛行機のシェア分布」が綺麗に分かれている。
【第2章】
航空会社は、4時間の壁を切った路線に対しても、そう簡単に新幹線にシェアを譲ることはしていない。
【第3章】
自然災害により、交通機関の需要は変化する。
変化の激しい不確実な現代には、新幹線と飛行機がしっかり役割を分担して、交通機関としての冗長性を確保するかが大切だと感じます。