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KEN(@nomilenolife)です。
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研究者や特定分野の専門家を目指す方にとって、博士号は必須アイ
そして、その博士号を取得するために必須のアイテムが、査読論文
その査読論文を書き、博士号を取得するメリットをご紹介します。
査読とは?
そもそも「査読」という言葉を聞いたことがない方も多いのではないでしょうか?
査読(peer review)とは、研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証のこと。
研究者が学術雑誌に投稿した論文が掲載される前に行われる。
研究助成団体に研究費を申請する際のそれも指すことがある。
審査(refereeing)とも呼ばれることがある。
(Wikipedia「査読」より)
要約すると、有識者から客観的に研究論文の妥当性や有為性を客観的に判断してもらうための過程ということです。
世間一般の社会人には縁のない言葉かもしれませんが、学術の分野では非常に重要な言葉です。
査読を突破した論文(査読論文)は、有識者による客観的な審査を経ているため、信頼できる論文と言えます。
査読論文ができるまで
ここでは、学生時代に執筆した2本の論文を、査読審査を経て学会誌に投稿させた友人の例をご紹介したいと思います。
【1本目の論文】
2017年2月 卒業研究として学内で発表
2017年7月 研究内容を発展させ、全国規模の国内学会へ論文を投稿
2017年11月 学会へ参加し、論文発表
2018年2月 査読付き論文の審査へ応募
2018年6月 審査結果が届き、修正対応などを行う
2019年1月 論文が掲載された学会誌が刊行
【2本目の論文】
2019年2月 修士研究として学内で発表
2019年3月 研究内容を発展させ、全国規模の国内学会へ論文を投稿
2019年6月 学会へ参加し、論文発表
2019年6月 査読付き論文の審査へ応募
2019年10月 審査結果が届き、修正対応などを行う
2020年4月 論文が掲載された学会誌が刊行
このように、査読論文というのは1日2日で完成するものではなく、1~2年単位の長い年月を経て一つの業績として認められるものになります。
査読者は匿名ですが、京都大学や東京工業大学の教授など、国内外で権威ある人たちが審査に関わっていると考えられます。
ABC予想を証明した京都大学の望月教授の論文は、あまりにも難しすぎて世界中に査読者が数えるほどしかおらず、査読審査に8年かかったそうです。
各種論文の難易度
研究論文というのは、学術分野や論文を投稿する学会によって難易度が異なります。
上記でご紹介した友人は、防災や交通に関する研究を行っていたため、そちらの分野における学会や論文の難易度を、目安としてご紹介したいと思います。
論文の種類 | 難易度 |
国際学会の学会誌に論文が掲載 | S |
国際学会へ論文が受理される | A |
全国規模の学会誌へ論文が掲載 | A |
全国規模の国内学会へ論文投稿 | B |
地方支部での論文投稿&学会発表 | C |
修士論文 | C |
卒業論文 | D |
主にこのような序列となっており、最も権威ある研究業績として認められるのは、国際学会誌への論文投稿です。
学会の種類にもよりますが、友人が所属する専門分野の国際学会では、論文が受理されること自体とても難しいです。
東大生などでも、国際学会への論文投稿は容赦なく落とされる世界です。
一方、全国規模の国内学会へ査読論文を投稿しても、半分以上は審査でリジェクト(不採択)されます。
そのため、「国際学会で発表できること」と「全国規模の国内学会で査読論文を掲載させること」は同程度の評価価値として考えられています。
次いで、国内の全国規模の学会で論文発表をすることや、地方支部での論文投稿および学会発表などがあります。
これらはある程度の研究成果が必要ですが、正直なところ、誰でも投稿して発表することができます。
そのため、研究業績として認められるほどのものにはなりません。
また、たいした研究成果がなくてもとりあえず学位を与えて卒業させるのが日本の大学の実情です。
そのため、紀要や卒業論文などの学位論文といった学内論文は、残念ながら何の研究業績にもなりません。
博士号を取得するために必要な業績は?
上記で学会や論文に関する難易度をご紹介しましたが、どれほどの水準を満たせば博士号を取得することができるのでしょうか。
私や友人が在籍していた、北海道大学大学院での事例をご紹介します。
【国内学会と国際学会で論文発表】
全国規模の国内学会で、第一著者として査読論文を掲載:2本
権威ある国際学会で論文発表:1本
【国際学会で論文発表】
権威ある国際学会で論文発表:2本
専攻分野や大学によって異なるとは思いますが、「日本語の査読論文2本+英語論文1本」もしくは「英語論文2本」が博士号取得の一つの目安になります。
友人の知り合いの方で、27歳にして大阪大学の助教授になった方も博士学位は同じ基準と仰っていたので、旧帝大レベルで博士号を取得するにはこれだけの業績が求められることを認識しましょう。
博士学位論文では、これらで積み上げた研究業績を一つの論文にまとめ、学位を申請するという流れになります。
博士号を取得するメリット
最後に、博士号を取得するメリットを3つご紹介したいと思います。
世界で一目置かれる
1つ目のメリットは、「世界で一目置かれる」ということです。
海外では、博士号を持っていると様々な場面で重宝されます。
国際線の航空券を予約・購入する際の事例を見てみましょう。
日系エアライン:敬称にMr.やMs.などしかない。
海外エアライン:敬称にDr.やProf.などがある。
このように、博士は世界で一目置かれる存在として扱ってもらうことができます。
収入面でもその差は歴然で、米国では博士号を持っていると30歳前後で900万円ほど稼ぐことができます。

(出典:日本経済新聞「博士」生かせぬ日本企業・2019年12月8日)
一方、グラフからもわかるように、残念ながら日本の社会では学位を積んでも給与はそこまで上がりません。
これは、日本人は学位よりも出身大学や年功序列・協調性といった価値観が大好きなため、大学院卒の人材をまともに扱える環境は少ないからです。
学位を積むほど、日本では居場所がなくなっていくことも併せて認識しておきましょう。
研究業績を信頼してもらえる
2つ目のメリットは、「研究業績を信頼してもらえる」ということです。
日本の大学院卒といえば、大多数が修士課程修了かと思います。
友人のように、修士課程まででもそれなりに研究業績を積むことはできますが、逆も然りでたいした研究業績がなくても修士号は取得できます。
つまり、どれほど研究業績を積んでも学位がなければ、所詮は修士号止まりなんですよね。
これでは、せっかく積み上げてきたものが報われる機会はなかなかありません。
博士号を持っていることで、そのへんにいるような他者とは異なり「きちんと1つの分野で研究業績を修めた証明」として信頼を得られるでしょう。
会社員よりも楽しい
3つ目のメリットは、「会社員よりも楽しい」ということです。
新規性や独創性のある事業ではなく、これまでと同じ業務をこなす。
ミスをすれば上司などから叱られ、残業などを強いられる。
同僚などとの飲み会では、他人の噂話や愚痴が大半。
努力しても劇的に給与水準が変わることはない。
学会発表で有識者との議論を通して、論理的に物事を考え説明する力がつく。
未知の領域で、新たな発見や現象の仕組みを解明できる。
自身の努力がダイレクトに研究業績として反映される。
1人の研究者として、世の中に名を遺すことができる。
友人も今は生きるためにやむなく会社員をやっているそうですが、本質的に企業で働くことに興味がないそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、査読論文で研究業績を積み上げることの難易度や博士号取得を目指すメリットなどについてご紹介してきました。
その結果、博士号取得は難易度こそ高いですが、取得した暁には世界に羽ばたくことができる可能性を秘めていることがわかりました。
また、友人は社会人博士課程の入学試験時に、教授陣から以下のように言われたそうです。
どうせならインパクトファクターの高い論文をたくさん書いて、北海道大学の世界的な競争力を高めてほしい!
会社員で毎日を消耗する人生にずっと疑問を感じていた友人は、「これほど知的好奇心を刺激してくれることはない」と思い、20代の10年間を北大での学問に捧げる覚悟を決めたそうです。